*雨は止まない。



キスをする。
優しく、唇を吸うように、キスを。
でも、そこから先は何もしない。


彼の体が震えるから。


2人の気持ちが一緒になってから、1週間。
ノーマのエバーライト事件も無事、解決し、
平穏な時間が流れていた。

2人で過ごす時間はとても幸せで、
毎日、毎日隠れてキスをした

幸せだ。

でも、彼は幸せなのだろうか?

彼の心の奥底が見えなくて
時々不安になる。

少し激しいキスをしただけで震える彼の体。

裸体を見せようとしない彼。




彼は、何も話してくれない。






今日も隠れてキスをする。
甘い、甘いキスをする。
今日は太陽が優しく微笑んでて
花が綺麗に咲いているこの場所で、キスをする。
ハリエットがよく来る花畑とはまた少し違う綺麗さをもつこの場所は
いつしか2人の密会の場所になっていた。

「風がきもちーのぉージェー坊」
「そうですね・・・」
大の字になって寝転んで、頭をジェイのひざの上に置く。
以前なら、何ですか?気持ち悪い。等と返事が返ってきていただろう。
でも今は違う。
彼は少し頬を染めながら何も言わずに手を頭に添えてくれる。
幸せだ。
暖かい、幸せな時間。

次の日も、その次の日も、
少しの時間でもいいから、と、ココで会う。

その日は、雨。

木陰で雨宿りしながら2人は今日あった事を話していた。
他愛もない雑談。
そんな話も尽きてきたところ、会話がふと止まる。
2人の影が重なる。
思い切り抱きしめながら、キスをする。
少し乱れる彼の呼吸。
また、頬が赤くなっている。

かわいい。

強く引き寄せて抱きしめる。
聞こえる彼の少し早い鼓動。

かわいい。

またキスをする。
先ほどより、もっと赤くなる。

かわいい。

その時、勢いあまってジェイは後ろに倒れてしまった。
コチラも、急な事で対応できず、
一緒になって倒れこむ。

2人で少し見詰め合って、キスをした。
指と指を絡ませあって
最初は優しいキスだったのに
今日は、止まらない。
舌を入れて、すこしかき乱してやるともれる声
彼の指に力が入る。
腰に手をあて、首筋にキスをする
服に手を入れようとすると、
彼の体は震えた。
そして、懸命に体を隠そうとする。
でも、その時見てしまった。

彼の体に残る痣を。

「ジェー坊・・・ワレ・・・」
「・・・」
「その痣・・・・・・何じゃ?」

踏み入れてはいけない場所。
分かっていたけど、聞かないでいたかったけど
聞かずにはいられなかった。

体が、動く。
力ずくで服をめくる。
「ちょっ・・・!!やめてくださいよ!モーゼスさん!」
静止の声は、聞こえない。
服の下は、見るも無残な痕。
明らかに、拷問でもされたような傷ばかり。
「見るな・・・見るなぁっ!!」
泣きそうな叫び声で我に返る。
彼の目からは、涙がこぼれていた。
痣のことで頭があまりまわらなくて
大好きな、大好きな彼が泣いているのをみて
ただ、抱きしめた。
泣き続ける彼の頭をなでて
ただ、抱きしめた。


雨は止まなくて、雲は晴れなくて
雨音だけが響いてた。
花が濡れていく。


雨の中、歩く。手を繋いで。街に帰るため。
傘は、2人では少し小さいけど
それでも1本の傘で歩く。


ジェイが、重い口を開く。
「・・・昔、ずっと強姦されてたんですよ。男に」
「・・・」
「しかも育ての親ですよ。もう拷問に近いものでしたけど」
「・・・」
「・・・・・・・・幻滅、しましたよね」
「・・・」
「・・・」
モーゼスが何も言わなくて、あぁ、もう、ダメなんだな
と思って手を離そうとした時
手を強く、痛いほど握られた。
「幻滅なんて、するわけない」
「・・・ぇ」
「ワレにそんな事やったやつ、殴りとばしたいぐらいじゃ」
「・・・でも、ボクの体、汚れちゃってるんですよ
 あんなやつに毎日毎日オモチャにされて・・・」
「汚れてるとか、汚れとらんとか、関係ない!
 好きなんじゃ。ワレの事
 好きやから、ワレが何でも、汚くてもえぇ
 一緒におりたいんや・・・」

涙がでる。

このことを彼に告げたら、離れていくと思った。
汚い、自分だから、
心が綺麗な彼には、拒まれると思った。

でも、彼は手を差し伸べてくれた。
ただ、抱きしめてくれた。



雨が、止んだ。
優しい太陽が、微笑みかけてくれる。
花についた雨水が、太陽の光で
綺麗に、綺麗に輝いていた。
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