運命


カーレルは明日、死ぬ。
ジューダスから告げられた未来は、あまりに残酷で、
皆は、何も言葉がでないほど動揺していた。


少し時間はたち、明日の作戦会議は終り、
皆が明日のためにと眠りに入ろうとしているだろうである時、
ジューダスは一人で部屋におりシャルティエに話しかけていた
「……言ってよかったのだろうか…?」
『後悔…しているのですか?』
「かもしれない……このままカーレルは死ぬという事実を告げずに、
 何も知らないままのほうがよかったのかもしれない……」
『坊ちゃんらしくないじゃないですか』
「……?」
『僕の知っている坊ちゃんは、自分の考えは絶対に曲げなくて、
 一度決めたことは絶対に最後までやりとおして、後悔をしない、という人ですよ』
「……」
『でも…僕は、こう思います………今ならまだ間に合いますよ…?』
「……何のことだ?」
『とぼけないで下さい。カーレルのことですよ。
 今なら、彼を死なせないようになんらかの対策を考えれるはずです
 …坊ちゃんも分かってるでしょう?カーレルが死ななければ、坊ちゃんはっ!』
「言うなっ!!」
いきなり叫んだジューダスの声に驚き、
シャルティエはこの先続けるはずだった言葉を飲んだ。
カランッ…と、シャルティエをベッドの上に起き、ジューダスは部屋出ていこうとした。
『坊ちゃん!何処にっ!』
シャルティエが叫んだが、
シャルティエの声もむなしく、ジューダスは無言で部屋をあとにした。


外に出て、頭を冷やそうと思った。
余計なことを考えていると、明日に差し支える。
明日は歴史でも重要な、天地戦争の決着がつく日だ。
そんな大事な日に、失敗などできない。

そう…何も考えるな…。

明日のために…何も…

「エミリオ…?」
いきなり背後から声をかけられ、
かなり驚いたジューダスは、剣を今すぐにでも引き抜ける体制になっていた。
しかし、オリジナルシャルティエの顔を見ると、“お前か…”とつぶやき、体制を元に戻した。
「こんな時間にこんな所で何してるんだよ?体調くずすよ?
 明日は大事な日なんだから、早く寝なきゃ!」
「…そういうお前こそこんなところで何をしているんだ?」
「いや、散歩…」
「…は?」
と、呆れた顔でジューダスはオリジナルシャルティエの顔を見上げた。
「いや、明日だっ!………て思うと寝着けなくて…」
“お前はカイルか、”と思わず言いたくなったが、はやく帰ろう!と言い、
手を引いて歩くオリジナルシャルティエを見ていると、言うタイミングを逃してしまった。
せっかく頭を冷やすために外に出てきたものの、
十分もたたぬまにオリジナルシャルティエによってラディスロウに戻されてしまった。
「さ、僕も寝るから、エミリオも、おやすみ」
と、言いながら、オリジナルシャルティエはジューダスを自分の部屋に戻るように言った。
「……」
「何立ち止まってるんだよ?はやく戻りなよ?寒いし……」
しばらく黙っていたジューダスだが、下をうつむき、小さな声で、
「戻りたくない…」
「…なんで?」
“シャルティエがいるから…”とは言えるはずもなく、ジューダスは下をうつむいて黙りこんでしまった。
「……仕方ないなぁ」
とオリジナルシャルティエはジューダスの手を引き、歩き出した
「っ!何処へ行くんだ?」
「何処って、僕の部屋」
当たり前のように言うオリジナルシャルティエ。
それに少し戸惑い、困った顔をジューダスを見て、オリジナルシャルティエは、
「部屋になんで戻りたくないのかは分からないけど、じゃあ僕の部屋で寝ればいいでしょ?嫌?」
「別に嫌じゃないが…」
「じゃあ決まり!今晩は僕の部屋に泊まること、いいね?」
「……」
ジューダスは黙っていたが、オリジナルシャルティエはそれを了解とみなし、足を自分の部屋へと進めた。


「…あ」
と、部屋に入るなり、オリジナルシャルティエは止まってしまった
「…そういえば、僕の部屋……ベット一つしかなかったんだ…」
どうしようどうしようとオロオロしているところを見ると、
シャルティエもこんな感じなんだろうな、と少し微笑んでしまった
「エミリオ!なんで笑うんだよぉー」
「……いや」
「でも…どうしよう?一緒に寝る?」
「…僕はソファーででも寝よう…」
「布団……なかったら風邪ひくよ?」
そう、オリジナルシャルティエの部屋は、一人部屋なので、
もちろん、布団も一組しかない。
「…部屋でとってくる?」
「……いい…」
「でも……」
風邪ひく…と、言う前に、ジューダスはベットにもぐりこんでいた
「…エミリオ?」
「何をしている?寝るんだろう?」
「……あ、うん」


ベットに男二人、背中合わせに寝転んでいた。
頭を冷やすために部屋をでていきたのに、
僕は何をしているんだ……と思っていた。

(今ならまだ間に合いますよ?)

シャルティエが、自分の為だと思い、言ってくれたのは分かる、
しかし、歴史を改変するということは、エルレインとやっていることが同じだ。
奴と一緒だなんて、間違ってもゴメンだ。
でも…でも、………
今、ココでカーレルを死なせなかったら、
自分には、いままで望んでいた物すべてが手に入るといっても過言ではないだろう。
カーレルが死ななければ、ミクトランは蘇らない。
と、いうことはだ、神の眼との事件もなくなることであろう。
自分も裏切り者とは呼ばれなくなる。
幸せな暮らしが手に入る。
カーレルさえ死ななければ。
しかし、裏切り者と呼ばれても、
愛する者と出会えた。
大切な、かけがえのない者とも出会えた。
仲間と…出会えた。
スタンに、ルーティに、フィリアに、ウッドロウに……
しかし、ハロルドのこともある。
実の兄が死ぬ、というか、愛する身内が死ぬということは
誰もがつらい事だと思う。
カーレルが死ななければ、ハロルドも悲しい思いをしなくていいのだ。

………自分は、どうすればいい…?

「…ねぇ、エミリオ」
「え?あ、何だ?」
考え事をしているときに、オリジナルシャルティエは話しかけてきた。
「なんで、こんな時間に外にいたの?」
「色々あるんだ…」
「ふぅん…」
「……独り言だと思って、聞いて欲しい…」
と、ジューダスは、話しだした。
「自分は、将来苦しい思いをすると分かっていて、
 もし、もし、過去に行って、その過ちを直し、
 将来の自分を幸せにできるなら……どうする?」
唐突の質問に、オリジナルシャルティエは少し考えた。
しかし、答える間もなく、ジューダスは話を続けた。
「しかし、それをしてしまうと……大切な人と出会えなくなる。
 けど、苦しい思いをしなくてよくなる…」
なにやら思いつめているジューダスを見て、
オリジナルシャルティエは、重い口を開いた。
「僕は……エミリオと出会えたのは運命だと思う。」
質問とは明らかに合っていない解答なのだが、
オリジナルシャルティエは、話を続けた。
「なんかね、初めて会った気がしなかったんだ……
 君に、初めて会ったとき……
 初めて会うはずなのに、何か、違ったんだ
 いままで長い間一緒にいたような、
 何か、二人でやり遂げたような…」
オリジナルシャルティエの言ってることは、
あながち間違いではないと思う。
しかし、オリジナルシャルティエにとっては可笑しい話なのだろう。
「でも、まだ会って少ししかたってないけど、
 僕が知ってるエミリオは、自分の考えは絶対に曲げなくて、
 一度決めたことは絶対に最後までやりとおして、後悔をしない、という人だと思うよ」
一瞬、ジューダスは目を見開いた。
「え……」
「だから、だから、最初にコレって決めたことをやればいいんじゃないのかな?
 幸せになりたい!て最初に思ったんだったら、それを貫けばいいし、
 今の生活でもいいから、大切な人と出会いたい、って思ったんなら、それを貫けばいいし
 でも……」
そういうとい、オリジナルシャルティエは少し間をあけ、
微笑みながら、ジューダスのほうを向き、こうつぶやいた。


「でも、僕は、大切な人と出会えないなんて、幸せじゃないと思うよ」



次の日の朝早く、ジューダスは部屋に戻ってきた
『坊ちゃん……その、昨日はスミマセンでした…』
朝日を浴びて、コアクリスタルはキレイに光っていた。
『僕が間違ってました……僕が言ってることは、
 エルレイン達がやっているようなことをしろと坊ちゃんに勧めてるんですよね…』
心なしか、ショボンとしているようにも見える、
そんなシャルティエを持ち上げ、軽く抱きしめた。
『ぼ、坊ちゃん?』
「寒くなかったか…?」
剣だから体がないので、寒くはないのだが、シャルティエははい、と小さく答えた。
「一晩考えたんだ……シャルティエに相談して…」
『ぼ、僕にですか?!ば、バカな事言ってたんじゃないですか?!』
「……いいや」
『……なんか、イヤな予感がするんですが…』
「…………僕は、スタンや、ルーティや、フィリアにウッドロウ、
 マリアンに出会ったのを、出会わないことになんかはしたくないと思う…
 もし、幸せな生活が待っていたとしても、その世界には、
 シャル、お前がいない。
 お前とは出会えなくなる
 シャルと出会えなくなるなんて、そんなの、幸せじゃないと思う
 本当に、シャルが僕のことを想ってくれて言ってくれてるのには感謝してる
 でも、エルレイン達とかよりも、
 僕とシャルが出会うってことを……否定しないでくれないか?」
『………はい…』




『もう一つ質問してもいいか……?』
『いいよ…ご期待通りの答えはできないかもしれないけど』
『大切な人が、罪を犯してしまったとしよう。
 それでも……それでもお前は大切な人の味方をするか?』
『僕は、大切な人についてくだけだよ』
『……そうか』




シャルは、本当に1000年前も変わらないと思う。

どうして、自分の望んでいる事を言ってくれるのだろう?

”最初に思ったことを貫けばいい”

シャルは、簡単に言うが、本当はとても難しいものだと思う。

しかし、実際にシャルは、最初に思ったことを貫いているようだ。

凄い、と思った。


「シャル…いつも、本当に感謝している…」
『僕は…坊ちゃんに何もできてないですよ…』
「いいや……そう思ってるのはお前だけだ」
シャルティエは何も答えなかった、照れくさいのだろう。
「昨日、お前のことを凄いと思った。」
『へ?…ぼ、僕をですか?』
「あぁ」
『何故ですか…?』
「………さぁ」
『ぼ、坊ちゃん!それくらい教えてくれても!』
「昨日、僕に無理やり歴史を改革しろといった罰だ」
『えぇっ?!許してくれたんじゃないんですか?!』
「僕は許したとは一言もいっていない」
『ぼ、坊ちゃんー;;』



剣だから、体がないから、寒くなない。
先ほどはそう思ったのだが、訂正しよう、とシャルティエは心の中で思った。
しかし今は、暖かい、
と、心のそこからシャルティエは思った。
ジューダスに抱きしめられているから、というのもあるが、
一番は………
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